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help リーダーに追加 RSS 平安寿子 『グッドラックららばい』

<<   作成日時 : 2006/07/10 22:03   >>

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 少し前(6/22)、週刊朝日の連載が面白いと書いた平安寿子氏、本の雑誌社顧問の目黒考二氏(=文芸評論家の北上次郎氏)が、平安寿子氏は面白いと書いているなと思ったら、「本の雑誌」そのものが、そのおすすめ文庫王国の2005年で平安寿子氏の『グッドラックららばい』(講談社文庫)を第1位にしていました。
 北上次郎氏のほめ具合は例えば、『恋はさじ加減』(新潮社)の書評で。「平安寿子の作品のなかでは、数年前の『グッドラックららばい』(講談社)が直木賞級の大傑作だった。この作品をものにしてから、肩の力が抜けたのか本来書きたかったというユーモア小説の才能がさらに開花したように見える。『愛の保存法』(光文社)、『くうねるところすむところ』(文芸春秋)など近作はすべて面白い。」
 それに文庫の帯に「この作品が私の代表作になる予感がします─平安寿子」と書いてあるので、読みました。
 どういう話かというと、母親はフラッと家出し、そのまま20年も家に帰りません。父親は貯金と倹約が趣味だというさえない人物。姉はダメ男に貢ぐのが趣味の女。妹は金持ちと結婚することを目ざし、さらに起業家に挑戦。まったく身勝手、ばらばらな一家の物語なのです。
 そんなバカな、と思う構成なのですが、巧みな人物造形と超現実味溢れる挿話で一気に読ませてしまいます。
 と、この小説のすすめを書きたいのでなく、おそらく、この物語で、一番印象の薄い、まったくさえないお父さんの定年の箇所を、そこが何か自分自身のように思えて、第二の人生の話に続いての話題として、引用させてもらおうと思ったのです。
 信也(お父さんの名前)は、信用金庫を、嘱託で2年延長されることもなく、第二の職場を紹介してもらうでもなく、「定年で退職金と花束を受け取った途端、信也は無職の年寄りとして世間に放り出されたのです。」
そうです、無職になるのです。
 「朝起きても、行くところがない。雑巾をかけるデスクがない。高校時代から使っている名前入りの小刀で削る鉛筆がない。赤いほっぺのリサちゃんが運んでくれるお茶がない。安いから、歩いて十分の距離もいとわず通った市役所の食堂の焼き魚定食。サービス残業のたびに、一人すすったカップラーメン。それを作るための湯が沸くのを待ちながら、給湯室の水きり場に伏せてある湯飲みを眺めているときの幸福感(あ、中谷くんのマグカップ。ドーナツ屋の景品だな。どのくらい通ったら貰えるんだろう)。
 そのすべてが失われてしまったと、信也は嘆いた。」
 この喪失感、身にしみるのです。
 第二の人生に向けて、さぁ、と前向きに言いますが、多くのものが失われるという厳しい現実もあるのです。

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